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第5話。創業明治三十年、初代 守太郎の豆富造りの意思を守る。

株式会社丸守 代表取締役社長 堀川 一裕氏(静岡県浜松市)
 

No.1 一粒の可能性を信じて

藤田 丸守さんとの出会いは、遠州食品加工業協同組合主催の勉強会に講師としてお招きしていただいたのがきっかけでしたね。
 
堀川
 ええ。藤田さんの講演の中で「ブランドには『識別』という役割があり、他社との違いを分析して、顧客に対して自社の立場を明確にしていくことが必要である」というお話がありましたよね。それを聞いて、丸守はお客様から「識別」がされているんだろうか? という疑念が過りました。

藤田 今では店頭に、県外メーカーも含めて数多くの豆富が並んでいますからね。
 
堀川 そうなんですよ。それに、豆富って日常的に食卓に上がるものだから、特別なものではないでしょ。でも味に対するお客様の要求は高くて、そこに豆富屋としてのむずかしさがあるんですよ。
 
藤田 当時、丸守さんは地元スーパーを中心に販路を確保していましたよね。豆富製造については長年の実績があるけれど、ブランド戦略については後回しになっていたんでしょうか。
 
堀川 おっしゃる通りです。今思うと、それまではパッケージも単発的につくっていたので、商品が売り場に並んだときにバラバラな印象になっていたんですね。
 
藤田 「丸守」としての統一感を出していくことは、ブランディングにおいて大切なことですからね。
 
堀川 今はその意味がよくわかります。丸守は明治30年に豆富屋を始めてもう100年以上になるんです。初代守太郎の豆富造りの意思を守りつつも、時代の変化に対応していかなくてはなりません。5代目として会社の意識改革も必要な時期ではあったんですが、具体的に何をどうしたら良いかわからなかったんです。
 
藤田 「こうなりたい」って言うのは簡単でも、実現するのは難しいものです。
 
堀川 藤田さんに開口一番「自社で魅力がわからない商品を、どうやってお客様に認めていただくんですか? 必要なのは、丸守さんならではの魅力をしっかり打ち出すことですよ!」って、強烈な指摘をいただいたことを思い出します。このお言葉があったから余計に奮起しましたね。
 
藤田 そうでしたか。丸守さんの場合は、強みを明確にして、ターゲットを絞り込むことがポイントでした。そうして初めて差異化された一定の方向性が見つかるんだと思います。
 
堀川 藤田さんにも協力していただいて、まずはの強みを客観的に分析しました。浜松における豆富屋第1号の創業であること。初代守太郎の意思を守り続けていること。地元で100年以上愛されていること。それに、うちの商品の一番のこだわりは「豆腐」ではなく「豆富」として長年商売していること。一粒の可能性を信じて、それを充分に引き出し、豆から人を富ませる「豆富」だということでした。
 
藤田 そうですね。丸守さんには、「豆腐」ではなく「豆富」という強いこだわりがありました。地元で100年を超える老舗の豆富屋として、「一粒の可能性を信じて、それを充分に引き出す」という豆富造りにかける想いは、選ばれる価値を持っていると思いましたね。
 
堀川 私たちは当時、豆富を造る技術には長けていたけれど、お客様にアピールする方法について、そこまで深く考えてこなかったんです。でも、おいしい豆富を造るだけじゃダメだと。デザインの力でうちの良さを伝えていく必要があるんじゃないかと。丸守の強みをはっきりと自覚してからは、それをどう伝えていくか? が課題でしたね。ただ単に、見た目だけで惹きつければ良いというわけではないでしょうし。
 
藤田 そうなんです。よく、「デザイナーに依頼しても商品が売れない」なんて話を聞きますが、それは見た目が効果的なメッセージとして機能していないからだと思います。デザインは価値を見つけ出し、磨き、伝えること。僕は、商品の価値を伝えるために、まずは情報を整理して本質的な価値を見つけてから、課題解決に向かう「売れる仕組み」と「伝わる表現」を考えます。
 
堀川 確かに、藤田さんとの打ち合わせは、デザインよりも内側のことや市場性について話し合っている時間の方が長いですよね。
 
藤田 デザインは見た目や機能から問題を解決する手段なんです。まずは丸守さんの想いや背景を聞き取って、目的を確認することが第一です。
 
堀川 デザイナーさんはクリエイティブなお仕事だから、感覚的に仕事をされていると思っていましたけど、実はもっと地道で、論理的というか、科学的な思考が必要なんですね。
 
藤田 あはは、地道ですか。これは余談ですけど、デザインって、語源を辿るとラテン語で「整理する」っていう意味があるんです。あらゆるモノやコトの関係を整えて、伝える情報を精査し表現するのがデザインだとも言えるんです。
 
堀川 僕の中のイメージでは、「情報が伝わる仕組みづくりの仕掛け人」かな?
 
藤田 「仕掛け人」ですか?
 
堀川 はい。常に様々なことに広くアンテナを張っていらっしゃるから、商品の見せ方だけでなく販売方法についても広い視野で見てくださいました。伝える仕組みから見直していただけるなんて、初めは予想もしていなかったことです。新鮮で的確な視点が「仕掛け人」だなあと。少なくとも僕の目にはそう映りましたよ。
 
藤田 ありがとうございます。なんだか格好良くて照れ臭いですね。次は、具体的にブランドを再構築するきっかけとなった「濱松豆富」についてお話をしましょうか。

     

 



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株式会社丸守

創業明治30年、初代 守太郎のこだわりを守る浜松の豆富屋。有玉西町に工場を構え、南アルプス最南端の水脈の雪解け水を敷地内地下約300メートルからくみ上げ、豆富造りの全行程に使用。大豆、水、にがりだけで安心・安全にこだわった非加熱製法の豆富造りをしている。
 
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